幼少期からの専門競技への危惧とマルチスポーツの有用性
久しぶりの更新です.
今日は,幼少期から一つの種目に専念するのが良いのか?
それともいろんなスポーツを経験する方がいいのか?
というテーマのお話です. 結論から言うと,サッカーのように大人になって成熟するようなスポーツの場合 小さな頃からその競技だけをさせるのは危険が伴うというお話です
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日本スポーツ振興センターは「アスリート育成パスウェイ」,つまりアスリートをどのように育成していくか?という指標として日本版FTEMを提示しています(図参照).

これはオランダなどの欧米諸国の考え方を元に日本版を作っています.
F:Fundamental・・・運動を楽しみ,競技に興味を持っていく段階
T: Talent・・・自己能力を高め,他の選手と競う喜びを見出せる段階
E: Elite・・・自己の可能性に挑戦し,国際大会で勝負するための各種努力ができる段階
M: Mastery・・・メダルを獲得し続ける段階
言わずとしれたA長尾は「F」を意識したクラブです.
さらに「F」は1~3に段階づけられ,
F1:さまざまな運動を体験する
F2:専門的な動きを体験する
F3:競技に専念していく
段階とされています.
A長尾のコンセプトはF1~F2です. この「F」の段階はいわゆる小学生年代. ただ・・・最近は小さい内から一つの競技に集中する子が増えているように思います. 本当にそれでいいの?
そこで,国内外の文献を渉猟してみました.
<国内オリンピアンでの調査>
まず,日本のオリンピアンの調査では,
「ジュニア世代からシニア世代まで直線的に駆け上がったパターンの選手は15%しかいない」
途中で上がったり下がったりしながらたどり着いた人が43%と最も多いという結果でした.
順風満帆な競技人生を送っている人は一握りであると言えます.
<マルチスポーツの効用と幼少期からの専門化への警鐘>
次に,スポーツにおける幾つかの発達モデルの仮説を検証した論文がありました.
つまり「早く始めて絞らないと遅れちゃう?」問題
● 運動パフォーマンスと早期化
早期に多数のスポーツを経験することは長期的なパフォーマンスに悪影響を与えない
つまり,早期にいろんな競技を経験することで「その競技のパフォーマンスが悪くなる(日本でいう遅れる)」ことは無いということです.
● スポーツへの参加と多様化
一方で,早期の専門化は,競技からのドロップアウトと強い関連性が示されています.
これは燃え尽きや同じ動作の繰り返しによる怪我によるものと考えられており,競技レベルに関係ないとも言われています.
逆に,早期に多数のスポーツや身体活動に挑戦することは,スポーツへの継続的な参加が促進されるという報告もあります.
集中的に専門化するとスポーツからの離脱が起きやすく,多数のスポーツを経験した人は長期的にスポーツに関与するということです.
● 早期の多様化と人間的な成長
幼少期の幅広いスポーツ経験が良好な仲間関係やリーダーシップスキルを育むことが報告されています. ここでいう人間性とは「対人能力」「社会貢献能力」「健全な自己認識」「幅広い仲間グループや社会的ネットワーク」を指しています.
● 遊びと練習
幼少期においては,専門的な「練習(practice)」よりも,構造化されていない「遊び(Play)」に参加していた方が,運動技能のパフォーマンスの柔軟性や適応性を発揮できる.
繰り返しますが,A長尾はF1~F2・・・ちょっとF3くらいを考えてトレーニングを行っています.
キック練習やコーンをおいたドリブルや単に回数だけを目標としたリフティングなどをメニューに入れないのは,こういった理由からです. 「なんで遊びみたいな練習ばかりしているの?」
「こんなところでやっていてもサッカーが上手くならないんじゃないの?」
と思われるところもあるかもしれませんが,実は非常に科学的にトレーニングされているということをご理解ください.
そして,多様なスポーツ体験を提供するために,サッカーだけでなく,ホッケーなども案内しているのも,こういった理由からです. さて,2月11日にわくわくホッケー教室を開催します. 今回のスペシャルゲストは,兵庫県出身の3名.いずれも世代別日本代表の経験を持つ選手を呼んでの体験会です.日本代表に入る選手たちの人間性に触れる良い機会です.
前述のように,「さまざまな競技を体験すること」を提供している一環ですので,是非ともご検討ください.

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